美少女タレント 絵梨花17歳

 

 

 

切り裂かれたステージ衣装

テレビ局の地下廊下を、一人の美少女が歩いて来る。

髪の長い、色白の娘である。

うつむき加減にした顔、そして、そのしとやかな歩き方から見て、美少女はかなりおとなしい性格をしているものと推察された。

丸襟の白ブラウスに、ピンク色のカーディガン。

スカートは、カーディガンよりやや濃い目のピンク色をした膝丈のプリーツだった。

「おはようございます……。」

美少女は、擦れ違うテレビ局員に気付くとスカートの前に両手を合わせ、しおらしくお辞儀をし、挨拶した。

 

木檜絵梨花(こぐれ・えりか)、17歳。

高校2年生……。

 

彼女は、テレビCMにも出たことのあるタレントの卵だった。

現在は少女向けファッション雑誌の仕事が主で、全くの無名であったが、一部に男性のファンも増え始めており、その歌唱力ゆえ、近いうち歌手活動も……という話が、事務所内では囁かれていた……。

 


 

絵梨花は、ある部屋の前まで来るとドアを開け、中に入った。その部屋のドア横には「第13回 決定!ちびっこ歌謡グランプリ控え室(女子)」と貼り紙がしてあった。

絵梨花は今日、このちびっこのど自慢番組に出場者として参加するのだった。

一般の視聴者は皆、このテの番組には当然、素人の子供たちが応募して出るものと思ってしまうが、実は絵梨花のように、タレントの卵たちが仕事として依頼され、出場するケースが少なくないのである。もちろん、大半は素人の少年少女なのであるが、その中にはルックス、歌唱力などでずば抜けたタレントの卵たちが、番組に色を添えるため混ぜられているのだった。

部屋の中には長机がいくつか合わせられて1つの列を作っており、その周りに十数人の少女たちが座っていた。

華やかなドレスに身を包んだ者、活動的なダンス系の衣装でキメている者、その姿は様々であった。

幼い少女たちに付き添って来た母親たちの姿もまた、そこにはあった。

壁周りには鏡が備え付けてあり、その前に座って化粧に余念のない少女たちもいた。

長机の少女たちは大部分、緊張した面もちで折り畳みイスに座り、自分の歌う歌などを小声で口ずさんだりしていたが、幼い子供たちなどは母親とじゃれ合ったり、突然「キー!」と叫んだりして母親から注意を受けていた。

絵梨花は衣装の入ったバッグを持つと、部屋の奥に仮設された簡易更衣室の方へと向かった。それはブティックの試着室同様、カーテンレールにカーテンが渡されただけの、簡単なシロモノであった。

今は誰も使っている気配がない。

絵梨花は落ち着いて着替えるためと、また、早く着替え過ぎて衣装が皺になってしまうのを防ぐため、このような番組の収録時には、いつもギリギリの時間に着替えることに決めているのだった。

更衣室のカーテンを開け、絵梨花は中に入って行った。

その絵梨花の後ろ姿を、部屋の中では数名の少女たちが、何やら嫌らしく口もとを歪めながら、じっと睨みつけていた。

ピンク色のドレスを着た髪の長い少女が中心に座り、その向かって右側にはおそろいの白いホットパンツ姿の娘が4人、そして左側には、まるで子供服のような可愛らしいデザインの、桃色地に白の水玉ワンピースを着た少女が、それぞれ立っていた。ホットパンツ姿の娘たちは皆ショートカットで、そして子供服風ワンピースの少女は2テールのお下げ。それぞれのお下げには、大きな、白地にピンクの水玉模様が付いたサテン地のリボンを留めていた。

皆、素人の少女とは明らかに異なる、あか抜けた顔立ちをしていたが、特に中央のドレス少女は、まさに息を飲むほどの美少女であった。ふてぶてしく脚を組み、腕組みなどして顔を歪めていることが、残念でたまらない……。

彼女らは皆、絵梨花と同じ劇団に所属するタレントの卵たちなのであった……。

 


 

更衣室に入り、絵梨花はカーテンを閉めた。

彼女はバッグを開け、中から衣装を取り出した。

それは透明なドレスカバーに入っていた。

襟元に白いリボンが付いた純白のフリル付きブラウスの下に、水色地へ白の水玉が愛らしいミニの段スカートが見えていた。

絵梨花はそのドレスカバーを更衣室壁面のフックへと掛けると、まず桃色のカーディガンを脱ぎ始めた。

絵梨花はカーディガンを脱ぐと、それをカーテンレールへと掛け、続いてブラウスのボタンを外し出した。下から白いスリップが見え始め、やがて彼女はブラウスから腕を引き抜いて行った。

上半身スリップの姿となった絵梨花。彼女はブラウスをもカーテンレールへと掛けると、続いてスカートのホックを外し、ファスナーを下ろした。

スカートを脱ぐ……。

白いスリップのスカート部が露出した。

裾をレースで縁取りされた、楚々とした純白のスリップ……。

絵梨花はやがて、全身スリップ1枚の姿になり、脱いだスカートをもカーテンレールへと掛けた。

さらに、絵梨花はスリップの肩紐へと手をかける。

スリップはスルスルと足元へ落ち、絵梨花はそこから両脚を抜きつつ、スリップを拾い上げた。

スリップもカーテンレールに掛けられる。

絵梨花は今や、真っ白なブラジャーとパンティー、それにフリルの折り返しが愛らしい純白ソックスのみの姿となった。

パンティーの前側にはフリルが施され、中央上部にはレモン色のリボンがチョコンと、可愛らしく飾られていた。真っ白なパンティーの生地には、良く見ると同じ白色の光沢ある水玉が散りばめられていることが分かった。

絵梨花はドレスカバーの中に手を入れ、スカートの中を探った。

と、その時である。

絵梨花の顔が何やら曇った。

絵梨花は慌てた様子でドレスカバーごとスカートをめくり、その中を目で確認した。

(ない……!)

そこには、確かにクリップへ留めて来た筈のアンダースコートがないのだった。

アンダースコートは、テニスの選手がパンティーの上に穿くもので、万一スカートがめくれた時や、ローアングルからカメラを向けられた際、パンティーが見えてしまわぬために絶対必要なものだった。

今日のスカートは裾が広がっている上、膝上のミニだ。しかもレッスンで習って来た振り付けは相当に激しい……。アンスコを穿かないでステージに立ったなら、間違いなくカメラの前でパンティーを露出してしまうだろう……。

(ああ……、どうしよう……。

習ったフリを付けなかったら怒られてしまうし……。)

と、その時である。

カーテンレールに掛けられていた絵梨花の服が全て、バサッという音と共に、更衣室の外へと引き取られてしまったのだった。

更衣室の外では何者か、数名がその場を去る足音が聞こえた。

「あ、あのっ……!」

絵梨花は動揺して声を発した。

「あの……!すいません……!

「お洋服、返して下さい……!」

しかし、外からは何の返事もなかった。

「すいません……!あの、私のお洋服……」

と、表から、

「あの、早くしてもらえませんかぁ……?」

と、苛立った様子の声が聞こえた。

誰かが待っているらしかった。小学生くらいの女の子だろうか。

(もう皆、着替え終えている様子だったのに……???)

絵梨花は不審に思ったが、「すみません」と返事をして、仕方なく着替えを続けた……。

 


 

更衣室の外では、その時、愛らしいレモン色のドレスに身を包んだ一人の幼女が、何かをうかがうように横を向いて見た。その彼女の視線の先には、先ほど絵梨花の後ろ姿を意地悪げに睨んでいた例の少女らがいた。

彼女らは皆、満面にわざとらしい笑みを浮かべ、音もなく、幼い少女へと拍手を送ってみせていた……。

 


 

絵梨花はブラウスの襟元に付いた光沢ある白いリボンを整え、そしてスカートに足を入れて行った。

フリフリと3段になった愛らしいスカート。

水色地に白の水玉が散らされた、その可愛らしいミニスカートを、絵梨花は腰まで引き上げて行った。

腰のファスナーを閉めようと片手をやる絵梨花。

ところが、である……。

絵梨花の手には、どこを探ってもファスナーらしきものが当たらないのだった。

絵梨花はスカートを回して、腰部分を前に持って来て見た。すると……!

何とスカートのファスナーは、恐らくハサミを使って切り取られてしまっているのだった……!

しかも、最上部のホックまで、糸を引き出されてユルユルにされてしまっていた……。

絵梨花は急速に涙ぐみ、そして1粒、床に涙を落とした。

――誰が一体、こんなひどいことを……!?

絵梨花は頭がクラクラとなり、気が遠くなるのを感じた……。

こんな衣装ではステージに立てない……。

スカートの後ろ側がパックリ開いてしまう上、いつホックが外れてスカートが脱げてしまうか分からない……!

(私、どうしたらいいの……!?)

絵梨花は思わず声をあげ、泣き出してしまった。

と、その時である。控え室のドアが開く音がして、女性スタッフが少女たちに声をかけるのが聞こえた。

「はい!それではもうすぐ本番入りますので、スタジオの方に集合して下さーい!あと5分後には始まりまーす!」

そしてドアは閉まり、控え室の中はザワザワとうるさくなった。

「あの……!早くしてもらえませんかぁ……!?」

更衣室の外では、先ほどの少女がまた苛立った声をかけて来た。

絵梨花は泣き声で「ごめんなさい」と言い、仕方なくスカートをユルユルのホックでそっと留めた。

そして彼女は床に置いてあった白いパニエを拾い上げ、それに右足から通して行った……。

 

 

恥ずかしいテレビCM

朝の教室では、男子生徒たちが集まって、何やら興奮した様子で話をしていた。

「おい、見たかよ、あのCM!」

「あれ、木檜だろう?」

「いつだったか出るって言ってた、あののど自慢だよなあ、あれ……。」

「たまんねえよ……!」

「立っちゃったよ、俺。」

「俺もだよ……。」

「母ちゃんいる前で俺なんか思いきし立っちゃったから、参ったぜ、ほんと……。」

「全くスゲエよな……!」

彼らが見たというテレビCM……。

それは、おおよそ次のようなものなのであった……。

 


 

「第13回!決定!ちびっこ歌謡グランプリ!……」

賑やかな音楽とともに、甲高い早口の女性ナレーションが加わる。

「全国から選りすぐった我こそは〜!のお嬢ちゃん、お坊っちゃんたちが、自慢のノドを競って大バトル〜……!」

画面には上下にそれぞれ4分割された小画面が出ていて、その間(=中央部分)には横長の比較的大きな画面があった。分割された画面の中には、数人の少年少女がマイクを持って歌う姿が次々に映し出されていた。

「今回はアクシデントも超出まくりでぇ……」とナレーションは続け、「こーんな場面や〜……?」と尻上がりに言うと、中央の横長画面には、階段から落ちる少年が映った。さらに「こんな場面〜……!」と言うと鼻ちょうちんを出す女の子が映った。そして、「それから、こーんなのだって……!」と女性ナレーターが言った時、画面は分割を解かれて1つになった。

その画面いっぱいには、なんとターンする少女のスカートをローアングルから見上げて撮った、いささか刺激的な映像が映し出された。

真っ白なパニエとともにヒラヒラと大きく広がる涼しげな水色のスカート。そのスカートの中には、パンティーまでが全て丸見えになってしまった……。

真っ白なパンティー。

その尻側がまず露出し、続いて前側がクルリと顔を向けて来る……。

ほんの一瞬の映像ではあったが、パンティーには純白の地に同色の光沢ある水玉が散りばめられているのが分かった。さらには正面のフリル、そして小さなレモン色のリボンまでが、全てハッキリと見て取れた……。

そう。それは絵梨花のパンチラ姿なのであった……。

画面は切り替わり、マイクを持って歌うドレス美少女の姿が映った。(これは、あの意地悪げな少女たちの中の一人である。)ナレーションは「とにかく興奮度バッツグ〜ン!の今回のチビッコ歌謡グランプリ……!」と続ける。そして、

「お父さんたちも、ドーン・ミスイットよ〜!?」

そう言って締めくくるのだったが、その最後の映像がまた衝撃的であった。

それは、今度もまた、絵梨花の姿なのだった。

ステージに作られた階段の途中から、絵梨花はステージへと飛び降りる。

スカートはフワッと、パニエもろともパラシュートのように膨らんで、絵梨花は両手を上げて着地成功。

可愛らしく顔を横にしてポーズ……。キマった……!と、その時である……。

絵梨花のスカートは、広がったパニエをすぼめつつ、スルスルッと急速にずり落ちて行ってしまったのである……!

ハッと下を見る絵梨花。

するとスカートは床へと落下して、パニエは再びフワッと広がった。

絵梨花は何と、下半身半透明のパニエ1枚の姿になってしまったのである……!

「うわっ……!」と会場が声をあげる。と同時に女性ナレーションは「火曜、7時っ!」と最後の言葉を叫ぶ。そして画像は、そこで静止する……。

画面には隅の方に番組のタイトルと放送日時とが出ていた。

絵梨花は、両手を上げて下半身パニエ1枚の姿を晒したまま、無様に驚いて下を見ていた。

床にはスカートが落ちている。

太ももも白いパンティーも、透けて丸見えの状態だ……!

 

CMは、そうして全国へと放送されてしまったのである……。

  


 

絵梨花は、それ以来、学校に来なくなった。

しかし、CMは毎日流され続けた。

しかも日に日に頻度が多くなるように思えた。

夕方の時間など、2回連続で、ということすら多くなって来た。

いよいよ、放送まであと5日間……。

 


 

「お願いします……!私のところだけでいいですから……!」

絵梨花は自室の電話から、泣きじゃくりつつ嘆願をしていた。

電話の相手は、例のテレビ局である。

「お願いです……!放送しないで下さい……!

「私のところだけでいいですから、編集して下さい……!

「お願いします……!あぁっ……!」

しかし……、電話は切られてしまった……。

絵梨花は、両頬に涙を流しつつ、大急ぎで受話器のボタンを押し直し、そしてリダイアルをした……。

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この物語はフィクションであり、登場する人物、組織などは全て実在しません。

本作品の著作権は、本作のアップロード日から50年間、愛飢汚が所有するらしいです。