うっかりお嬢様の大失敗
※これは、事実にもとづいたフィクションです。
夏服の娘
まず目を引いたのは、その魅惑的に広がって軽やかに揺れる、薄手のスカートだった。
それは初夏の街に似つかわしい、爽やかな水色の膝丈スカート。
裾に一周、光沢生地のラインが2本入り、その上にスカートと同色の可愛らしいリボン飾りが等間隔に付けられていた。
娘は女子大生であろうか。清潔感溢れる黒髪を、まぶしいほど清楚な純白のブラウスの肩にかけ、白いバッグを持って歩いている。ブラウスは両肩がパフスリーブとなり大きく膨らんでいる。袖はほとんどそのパフスリーブの部分しかない涼しげな夏物で、背中部分を丸い玉状のボタンで留めるデザインとなっていた。上の開いたバッグの膨らみ方からすると、あるいは娘は女子大生ではなく、この付近に多い予備校の生徒かも分からない。バッグにはテキストなどがたくさん入っていそうな雰囲気でもあった。
とにかく、清楚で真面目そうなイメージの娘である。
娘はターミナル駅へと向かって、あまり人通りの多くない幅広の歩道を、緑に生い茂る街路樹の下、やや早足に歩いていた。薄手のスカートは広がって、娘の歩みに合わせ左右に慌ただしく揺れていた。
私も駅に向かっていたため、ごく当然の成り行きで娘の後を歩いていた。
ただ、普通このような場合、男である私の方が歩幅が広いため、娘より後のポジションをキープするのが難しく、どうしても追い抜かなければ不自然を極めてしまうケースが多いのであるが、この娘は早足だったため、後ろに付けるのが難しいどころか、離れないようにこちらもせっせと歩かねばいけないほどだった。
私は娘の慌ただしく揺れる広がった水色スカートを見つめながら、やや息を弾ませ歩いていた。揺れるスカートの裾を飾る横一列のリボンが可愛らしい。思うに、あれらリボンがオモリの役目を果たし、娘のスカートは必要以上に、大きく左右へと揺れているのではないだろうか?
私の息が弾んでいる理由は、一つには私の年齢のせいもあったであろう。しかしもう一つには、可愛らしいデザインの広がったスカートを激しく揺らし歩く清楚な娘の後ろ姿に興奮していたこともあった。
それは本当に、魅惑的な後ろ姿だった。
全身から清楚感をふりまきつつ、広がったスカートを右へ左へ大きく揺らして早足に歩く娘。そのスカートの下には形の良いふくらはぎ、そして足首が、ストッキングに包まれ伸びている。
純白のパフスリーブブラウスにかかる黒髪。水色の、豊かに広がったスカート。その揺れる裾を飾る複数のリボンと、2本の光沢ライン。
私の息は、どんどん弾んだ。
と、その時である。
私は、娘のスカートの裾から、時折スカートと同じ水色をしたレースが顔を出すことに気付いた。
それは、スリップのように見えた。
スカートと同じ淡い水色をしたスリップの裾が、一部分スカートからチラチラと顔を出しているのである。
最近は、スリップ様のレース生地を故意にスカートからはみ出させるファッションが流行っているが、娘のスカートからはみ出すレースは、どうやら流行のファッションとは違うようだった。もしファッションならば、あのレースは常時スカートからはみ出しているはずであろう。しかし娘のスカートからは、一部分(娘の左斜め後方部分)にだけ、チラチラと不規則にレースが顔を出すのである。
(ひょっとして、あの娘…。
「シミチョロ」をしてしまっている…!?)
そう思った私は、うっかり街中を歩きつつスーツの股間をムクムクと膨らませ始めてしまった。
私の股間はあっという間に熱く膨張し切った。ふと見ると私のスーツは、スラックスの股間部分が明らかに突起してしまっていた。歩道にはさほど人通りは多くないとはいえ、ターミナル駅の近くである。誰も歩いていないわけではない。私はカバンを持っていない左手でポケットをつかみ、引っ張った。人々が皆、私を見ているかのような気持ちがした。しかし、私は意地でも娘から視線をそらさなかった。
娘のスカートからは、相変わらず水色のレースがチラチラと顔を出している。
あれは本当にスリップなのか?それとも、ああいうファッション、つまり「チラ見せレース」なのか?
しかし、そんなことは、さほど重要なことではなかった。
ただでさえ清楚で魅惑的な娘の後ろ姿。その後ろ姿に今、水色のスカートから時折覗く同色のレースが加わったのである。
これで、その娘は私にとって完璧な存在となった。
こんな素晴らしい光景に出会えるなんて。今日がこれほどラッキーな日になろうとは思わなかった。
娘は何か用事を抱えているのだろうか?相変わらずの早足でズンズン歩いて行った。私は彼女からはぐれぬよう、ペースを合わせて後ろを歩いた。
娘のスカートは豊かに広がりつつ左右に大きく揺れている。
裾のレースは、やはり時たま、同じ部分からのみ顔を出していた。
「顔を出す」と言うよりも、時には「垂れ下がる」と言う方が的確な表現と言えるほど、大きく露出することもあった。
まさに「ズルリ」という感じで、娘のレースは水色のスカートから、時折大きくはみ出すのだ。
私は少し歩みを速め、娘に近づいて行った。私は彼女のブラウスの背中が見たかったのである。
娘と私との距離が縮まって行く。中央部分を縦一列に白い玉ボタンで留めている純白ブラウスの背が、よく見られるようになって来た。
私は娘に接近しつつ、彼女のブラウスの背中を見つめた。
と…、
見えた!
今まで遠目には純白と映っていた娘のブラウスには、水色の下着がうっすら透けていたのである。初夏の陽射しを受け、娘のブラウスは一見まばゆく純白に輝いて見えていたのであろう。近づくと娘のブラウスには、確かに水色の下着が、うっすらとではあるが透けていた。
ということは、やはり、あのスカートから顔を覗かせる水色のレースはスリップということなのか…?
しかし、あの清楚な印象の娘が、白い夏物ブラウスの下に水色のスリップなど着るものだろうか?
私はさらに娘へと接近した。
そして娘の背中に視線を集中する。
やはり、純白ブラウスの下には、うっすらとではあるが水色の下着が透けている。
しかし、
私はそこで妙なことに気が付いた。
娘の両肩には水色の下着に付属するストラップが見えるのだが、それ以外にヒモが見えないのである。
普通、スリップを着用した女性の肩には、スリップ用とブラジャー用の計4本のストラップが見えるものである。ところが娘の両肩には、水色の2本線以外、どうやっても確認できないのだった。
(…………?)
謎はいよいよ深まった。
娘がブラウスの下に着ているのは、スリップなのか?それともチラ見せ用の服の一部なのか?
しかし、いずれにしてもブラジャーの線が見えないのはおかしい。もしや娘はノーブラなのか…!?
と、ここで私は思い出した。
そういえば近ごろ、若い女性たちの間で、ブラ付きスリップが流行していると聞いた。娘の肩に4本線が見えないのは、彼女もそのブラ付きスリップを着ているからなのではないか?
ということは…?
もし私の仮説が間違いでないとすれば、あの水色の、ブラウスに透けて見えるものは、やはり紛れもない下着、すなわちブラ付きスリップ、ということになる。
娘は純白のブラウスに水色のスリップをうっすら透かし出して見せ、さらにスカートの裾から、そのスリップの一部をチラチラはみ出させているということなのか…?
あの清楚な娘が、この大都会の街中で…!?
私の股間はまた一層、熱く膨張してしまい、慌てて左手でスラックスのポケットを引っ張った。
歩道橋で
やがて前方には歩道橋が現れた。娘はスカートを激しく揺らしつつ早足で、その歩道橋へと向かって行った。
娘は歩道橋を上り始めた。
もちろん、私も後を追う。
だが、
私は歩みのペースを緩め、今まで接近していた娘との距離を再び空けつつ歩いた。
私は、娘のスカートの中を見上げたかったのだ。
豊かに広がって揺れる娘のスカート。その中は下から覗いたら、どんな光景であろうか…?
それを想像し、私の胸は高鳴った。
娘はもう、歩道橋の階段を中腹よりも上まで上った。そこで、私は階段に足を乗せた。
見上げる…!
見えた…!
娘のスカートの中が、ほぼ狙い通りに見上げて覗けた。
広がりつつ左右に揺れる娘のスカートは、その中に水色のスリップ様のものをいっぱいに広げていた。
裾がレースになった、その水色のものは、やはり娘の左斜め後方部分だけ他の部分より垂れ下がっていた。そしてチラチラと、そのレースの裾を露出させているのだった。
娘のまばゆい太ももも大いに見えた。
(なんたる素晴らしい光景…!)
私は階段を下りて来る人たちの視線を気にすることもなく、ただ娘のスカート内にじっと見入った。
今思えば、私はあの時、人々から完全な「変態認定」を受けていたことだろう。
だが、下から見上げる娘の姿は、何ものにも代え難い、至高の宝玉だったのだ。
娘のスカート内にはパニエのようなものは見当たらなかった。水色のスリップ様のものは通常のスリップよりも大きく花開いてはいたが、それでも生地はツルツルとした触り心地の良さそうなものに見え、とてもスカートを押し広げるほどの機能を持っているようには思えなかった。従って娘のスカートは、そのたっぷりとした生地の量と、おそらく娘のヒップによる押し上げ効果とで、あれだけ豊かに広がっているのだろうと推測された。
娘は上り階段でもペースを落とさず早足である。さすがの若さだ。
スカートはそのため、相変わらず荒々しく揺れ、広がった開口部を私の視線の先に晒していた。
これは上手くすればパンティーまで拝見できてしまうのではないか?
私はスケベ丸出しな心で顔をやや火照らせながら、娘のスカート内を見つめ、階段を上って行った。
(あっ!見える…!)
娘のスカートが激しく後方へと跳ね上がった。
しかしその瞬間、なんと憎たらしいことに、私と娘との間に他の通行人が割り込んでしまった…。
「チッ…!」
私は小さく声を出し、大急ぎで横へと移動した。
娘の姿はまた捕捉できた。しかしスカートの揺れは元の調子に戻ってしまっていた。
あのスカートの跳ね上がり方ならば、絶対にパンティーまで見ることができたはずだ…!
私は馬鹿丸出しではあるが、その時、涙ぐむほどの悔しさを感じていた。そして、誰か私と一緒に階段を上っている者の一人か、もしくは複数人には、娘のパンチラが見えたのではないかと、そう思った。
と同時に、それはまたそれで娘にとっては恥ずかしい事件であり、なかなか興奮に値することだ、とも感じた。最悪、私以外の男全員の目に、娘はパンチラ姿を見られてしまったのかも分からない…。
そう思った途端、また一層スラックスの中をムクムク膨張させる私は、つくづく変態だと自覚し、少々自己嫌悪を覚えた。
娘は、その時、階段を上り終えた。
私は、ついに娘のパンティーを拝むことができず落胆もしたが、そんなことをしている場合ではなかった。階段を上り切った娘は、さらにペースを速め歩道橋の上を歩き出したのだ。私は慌て、小走りに階段を駆け上がり出した。時折いる先ほどのような邪魔な連中をかわしながら、息を切らしつつ、私は階段を駆け上って行った。
ショーの開幕
やがて、娘と私とはターミナル駅前の歩道へと出た。
ここはすごい人混みだ。私は娘を見失わぬよう、人をかき分けつつ、早足で追った。それでも、娘はチラチラと通行人の陰で見えなくなってしまう。
黒髪に純白のブラウス、裾に光沢の2本線とリボン飾りとがグルリ付いた豊かに広がり揺れるスカート。ストッキングに包まれた形良い脚。この娘の姿を決して見失ってはならない。
一体、この時の私はどんな顔をしていたであろうか?
とにかく必死に娘の姿を追っていた。
と、その時であった。
一人の初老女性が娘に声をかけ、娘はハッとした風に立ち止まった。私も少し驚き足の動きを一気に緩めた。背後から迷惑そうに私をよけた人々が私を次々に追い越して行く。
初老女性に顔を向け立ち止まる娘は、なにしろ清楚で愛らしい姿である。周囲を行き交う男性たちは、老いも若きも娘へと視線を送っていた。私はそれまで、娘の顔はよく確認していなかったが、飾り気のない黒髪と純白のパフスリーブブラウス、それに広がったスカートという着衣だけでも存分に男らの目を引く娘であった。
しかも20歳前後(19歳くらいか?)であろう娘のスカートは、ただ豊かに広がっているだけでなく、その裾に2本の光沢ラインが輝く上にグルリと一周、愛らしいリボン飾りが複数付いているのである。娘の年齢からすると少々幼すぎる印象のデザインではあったが、娘に良く似合う愛らしいスカートだった。
さらに…
近くで見る者の目には、純白ブラウスにうっすらと、水色の下着が透けていることだろう…。
私は、娘の方へと近づいて行った。と、私の耳に初老女性の声が飛び込んで来た。
「お嬢さん。シュミーズ、出ちゃってますよ?」
女性は決して大声でそう言ったわけではなく、娘に顔を近づけ、そっと言ったのであったが、雑踏に負けじと声を上げたのだろうか。上の言葉がハッキリと聞き取れた。
娘は初老女性から、「シミチョロ」を発見され、指摘を受けてしまったのであった。
しかし娘は、よく意味が分からない様子で、「はいっ?」などと聞き返していた。
初老女性は繰り返した。
「シュミーズ…。スカートの裾から…。お嬢さんのシュミーズ、スカートの裾から見えちゃってるの。」
今度はさらに大きな声だった。女性は自分の声が小さくて聞き取ってもらえなかったと思ったのであろう。しかし娘はおそらく、「シュミーズ」という言葉の意味が分からなかったのである。
「スカートの裾」と言われて娘は、自分のスカートを見下ろした。
「ここ。この後ろのとこ。」
初老女性は、例のレースが露出する部分を娘に教えてやった。
娘は体をよじり、広がったスカートの左斜め後方部を手で押さえ込んで見た。
「これ、お嬢さん、ほら。シュミーズ出ちゃってるの。」
初老女性に説明されながら、娘は膝を曲げ、体を大きくよじりつつ一生懸命にスカートの斜め後ろを確認していた。辺りでは通行人たち(特に男性)が娘に顔を向けては歩いて行った。
「あっ…!」
娘はその時、可愛らしい声を発した。スカートからレースが出てしまっていることを娘は発見したらしかった。
「これシュミーズよね?」
初老女性は娘に言った。
娘はみるみる顔を赤らめて行った。そして明らかに狼狽した様子で、スカートの左斜め後方部分のみ、バッグを持っていない左手で思い切り引っ張った。
やはり、娘がチラチラとスカートの裾から露出させていたものは、紛れもないスリップだったのだ。
恥ずかしげに赤面してスカートを引っ張る娘。その狼狽した姿を見れば、誰の目にも、そのスカートからはみ出した水色のレースが、娘にとっては絶対に人目に晒してはならぬ、下着の一部なのだという事実は明らかだった。
私は何気ないそぶりで娘の見える位置に立ち、その様子を見つめた。あの水色のレースがスリップだったと判明し、何故か私は嬉しかった。しかしそれよりもさらに、スリップの裾レースが一部覗いてしまったというだけで、あんなにもうろたえ羞恥を露わにする娘の反応に私は興奮を覚えた。
「あらまぁ、大変!(笑)お嬢さん、丈、間違えちゃったのかしら?まぁまぁまぁ…。(笑)」
初老女性は優しさを込めた調子ながら、慌てる娘に笑いながら言った。
「シュミーズ出ちゃってると、はしたないから。気を付けた方がいいわよ?男の人も大勢見てるから…。」
そんなことを言う初老女性に娘は「はい…」と返事をしつつ、うろたえてスリップをどうにかしようと努力していた。
娘の顔は真っ赤である。
そのトマトのごとく赤面した顔は、期待を裏切らない、楚々として整った、愛らしい顔立ちであった。
あれはきっと、どこかのお嬢様なのでは…!?
即座にそんなことを思ってしまうほどの気品が、娘の顔からは漂い出していた。
それにしても、なんと目のパッチリとした…、そして形の良い鼻…。
私は20も歳が離れていようかというその娘の顔に、胸をドキドキと高鳴らせた。
娘はバッグを持たない左手を使ってスカートの裾を引き、手を離してみるが、初老女性は「ああ、まだ出ちゃうわ」と言う。
娘は何度もスカートの裾を必死に引っ張ってみたが、露出したレースを隠すことは不可能だった。周囲では男性を含む大勢の通行人たちが次々に娘へ顔を向け、通り過ぎていた。中には娘の前方から通り過ぎた後、わざわざ振り返って娘の姿を見る者もあった。
「何?あれって、スリップ隠してんの?」
私の前を通る娘らの一人は、そう言った。彼女ら3人組は皆、娘の方を振り返り、娘がスカートの裾を必死に引っ張る姿を見つめていた。
娘はスカートから手を離すと、また水色のレースが一部分だけスカートからはみ出してしまう。
「ってか、あれって、『チラ見せ』じゃないのぉー…?」
「今どきスリップって、どんだけ古いんだよ、ってかぁ?(笑)」
「レース見えてたって、別に恥ずかしくないじゃんなー?」
「スリップ穿いてる方がよっぽどハズいよ!(笑)」
「ワハハハハハ…!(笑)」
「だっさ!」
そんなことを言いながら、3人組の娘たちは笑って通り過ぎて行った。
確かに、彼女らが言う通り、「チラ見せレース」が流行となっている時代というのに、あの娘はあんなに顔を真っ赤に染め、シミチョロ状態の自分に恥じ入り狼狽している。
これは素晴らしいお嬢様だ…!
私はまた、スラックス内の股間を熱く膨張させ始めてしまった。トランクスの股間部が先走り汁で濡れてしまっているのが感じられた。
大勢の人々が目を向ける中、ターミナル駅前の歩道上で必死にスリップを隠そうとうろたえている美しい娘。
なんとしとやかな、気品溢れるお嬢様であろうか…!
しかしそのお嬢様が、こんなにも多くの公衆から目を向けられる面前で、シミチョロを直そうとスカートを引っ張り、うろたえているのである。
この、ある種ギャップに、私は一層、興奮した。
娘はスカートを引っ張るのをあきらめ、今度はブラウスへと手をやって脇腹の部分をつまみ、ブラウスごと下のスリップを引き上げた。
これは確かに効果を発揮した。
スカートの裾からはスリップが消えた。
しかし、初老女性はまた声を上げるのだった。
「お嬢さん!こっちが出ちゃったわよ!」
私の角度からは見えなかったが、娘のスカートからはどうやら、今度は右斜め前側の裾からスリップのレースがはみ出してしまったらしかった。初老女性が先ほど言った通り、娘はスリップの丈を間違えて穿いて来てしまったのだろうか?
そう考えてみると、純白の夏物ブラウスの下へ水色のスリップを着てしまったのも「うっかり」だったのかも知れない。スカートとスリップの色を合わせたのは、あるいはスカートの中にスリップが目立ちにくいよう考えた上での計算だったのかも分からない。それほどあの娘は、人からスリップを見られたくなかったのだろう。スリップが「下着」だという意識、すなわち人前にさらけ出しては絶対にいけないものなのだという意識が、あの娘には強くあったのだろう。しかし純白ブラウスの下に水色のスリップなど着たら上半身がどうなってしまうか…。
あのお嬢様は、ああ見えて実はそそっかしいのかも知れなかった。
娘は「やだ…」と可愛い声を発すると、新たにスリップがはみ出てしまった部分のスカートをバッグごと両手で押さえ込んだ。引き上げていたブラウスからは手が離れた。するとすぐさま、また私から見えるスカートの左斜め後方の裾から、水色のレースがズリッ…と顔を出してしまうのだった。
「ああ、お嬢さん!こっち!こっちまた出ちゃった!」
初老女性は言い、デパートの買い物袋で娘のスカートを隠してやった。
娘は真っ赤に染めた品のある顔をこちらへと向け、ひどく狼狽した様子でスカートを左手で引っ張った。膝を折り、体をよじって、娘は広がった水色スカートの裾を飾るリボンの上辺りをつかみ、下へと引いていた。周囲では人々が不思議そうな顔をして娘を見つつ歩いていた。
娘は目に涙を浮かべ、消え入りたいような表情で、スカートを引っ張り下ろしていた。そして再び手をブラウスの脇腹へと移動させ、それをつかんで中のスリップを引き上げた。右手は大きく膨らんだ白いバッグを持っているため使えない。
娘の周囲には、徐々に立ち止まって見る人々が出始めてしまった。もはや娘の「スリップ引き上げショー」、開幕である。
ギャラリーはギャラリーを呼び集め、娘の周りにはどんどんと立ち止まる人々が増えて行った。何の騒ぎか分からなくとも、雑踏で人々が立ち止まっていれば、とりあえず他の通行人たちも立ち止まってみる。これは当然の心理であった。
「何、何!?何やってんの!?」
「あの女の子?」
「何?どうしたっての?」
ものの十数秒で、娘の周囲には人垣ができてしまった。
私は背後に3段ある階段を最上段まで上った。その位置に立ってみると、厚い人垣に囲まれる中スカートを引っ張り、あるいはブラウスを引き上げて狼狽する真っ赤な顔のお嬢様が見えた。
何という羞恥ショーだ…。
まさか、こんな事態になってしまうとは…。
私はかなり驚いていた。
スリップの裾レースが一部分、スカートからはみ出してしまっている、ただそれだけのことのために、気品溢れるお嬢様は激しく狼狽し、人々の「見せ物」と化しながらスカートを引っ張り、ブラウスとスリップを引き上げたりしているのだった。
私はその娘の姿を見るうちに、熱く膨張していた肉棒を、トランクスの中で思わず脈打たせてしまった。それは学生時代以降、長らく体験していなかった、大きな肉棒の動きであった。自分にまだ、こんな現象が起きるとは、正直、これもまた驚きであった。
私の股間が膨らんでうごめいていることは、夏物のスラックス上から丸分かりであったろう。しかし、もう私は、人目などどうでも良かった。それに、そのターミナル駅前の幅広歩道には、娘に目を向ける人以外、実際いなかった。
娘は可哀相に、両の頬に涙をこぼし始めた。
真っ赤な頬に大粒の涙が伝って落ちる…。
「ああ…、すいません…。」
娘はシミチョロを教えてくれた初老女性に泣き顔を向け、詫びた。そして左手でスカートを引っ張った姿のまま、右手に白いバッグを持ち、人垣の中へと真っ赤な顔を伏せ、割り込んで行った。
「すいません…。ごめんなさい…。」
娘は自分を見せ物にして鑑賞していた人々にまで愛らしい声で詫びながら、人垣の間を抜けて行った。
人垣は割れて娘を外へ出した。
娘は左手でスカートを引っ張ったまま走り出した。人垣の群衆はその後ろ姿を皆、見ている。
私は、慌てて階段を下り、娘の後を追った…。
ARISAWA, Midori
娘は地下鉄へと続く階段を小走りに下りて行った。それは、高級住宅街のある街を通る地下鉄への階段だった。やはりあの娘が御令嬢という読みは正解なのだろうか?
私はその地下鉄に全く用はなかったが、とてもこの魅惑的な娘から離れることはできなかった。私も娘の後に続き、階段を駆け下りていた。
娘はそこで、ふと私を振り返って見た。何か不穏な空気を察知したのであろうか?
娘は速度を速め階段を駆け下りて行った。私はその後を、構わずに追った…。
ホームの上。
白いバッグで「シミチョロ」を隠し、相変わらず真っ赤な顔で涙ぐみ電車を待つ娘。私は一つ隣の乗降口に当たる位置に立ち、こっそりと娘を見つめていた。
本当に愛らしい、気品漂う娘である。
ブラウスの前側は今、初めて見ることができたが、縁が二重になった大きめの丸襟に、それが左右から合わさる部分へ小さな白いコサージュが飾られていた。どこを見ても楚々として愛らしい娘だ。
ブラウスの胸は、程良い高さまで隆起し、山を作っている。
その娘はしかも今、シミチョロしてしまっているという、ただそれだけの理由であんなに赤く顔を染め、目に涙を溜めている…。
その羞恥心が、私の胸を強烈に打っていた。
考えてみれば、娘はブラ付きスリップを着たのがそもそもの失敗だった。
スリップがどうしてもはみ出してしまうのならば、トイレで脱いでしまうという手もあるわけだが、ブラ付きスリップを着ている娘には、そんなことはできない。もしスリップを脱ぐならば、娘はノーブラとなってしまうのだ。
あの夏物の純白ブラウスでは、娘の適度に膨らんだ両の乳房が透けて見えてしまうのは確実。
おそらく綺麗なピンク色をしていることであろう乳首も、やはり公衆の眼前に晒すこととなってしまうだろう。
電車が来た。
私は娘と共に、同じ車両へ乗り込んだ。
そして車内でじっくりと娘の姿を鑑賞し続けた後、娘と同じ駅で降りた。
そこは、案の定、超の付く高級住宅地がある駅であった。降りる者、皆が、ただ者ではない品を放っているように思えた。
私はその後も娘を追い続け、そして最後は娘の住む家まで付いて行った。
いや、「家」ではない。
それは、「お屋敷」であった。
白い瀟洒(しょうしゃ)な洋風の門を開け、娘はスカートのシミチョロをバッグでいまだに隠しつつ、小走りに豪邸へと向かって行った。
門柱には金色のプレートが付けられていたが、見ると、こう彫られてあった。
ARISAWA
Tadashi, Fumiko,
Midori
おそらく、”Midori”という名が娘の名であろう。
大豪邸に住む一人娘だったのか…。
「アリサワ・ミドリ」
私はその名前を記憶に刻み込みながら、その場を後にした。
今日一日に目撃した、全ての光景を思い出しながら。
胸を淫猥に高鳴らせて…。
私のスラックスの股間には、白い大きな汚れができてしまっていることを、私はその時、気付いてはいなかった…。
(完)
本作品は事実にもとづいたフィクションです。ヒロインお嬢様が着用している衣服は、著者(愛飢汚)が実際に目撃したものを筆力の及ぶ範囲内で(笑)必死に忠実に再現しました。なお、お嬢様の氏名や自宅に関しては創作であり、実在するものではございません。
御感想などはtiara@aiueo.artin.nuまで。
本作品の著作権は、本作のアップロード日から50年間、愛飢汚が所有するらしいです。