夢ならさめて…

 

〜令嬢・羞恥修羅場(はじしゅらば)〜

≪中巻≫

 

 

 

 

 

 

晒しもの令嬢

「ええ、只今入った情報をお知らせいたします……。先ほど、エレベーターに閉じこめられている乗客の方から管理会社のほうへインターホンで連絡が入り、乗客の中に、どうやらお手洗いに行きたくなっている女性がいるとのことです……。この女性は若い女性ということのようですが、エレベーターの故障から長時間が経過しております今、非常に心配な状況です……。」

テレビでは、故障エレベーターの新展開が実況レポートで伝えられた。

新宿ヤルタ前では、人々が立ち止まってスクリーンを見上げ、レポーターの声に耳を傾けていた……。


「んはああっ、んんっ……。」

エレベーターの中では、股間を押さえて膝を突く紀子美が、右手で手すりを握ったまま、辛そうに腰をモジモジと上下させていた。

「大丈夫……?」

「我慢してね……?」

婦人連れは紀子美の肩に手を添えてやり、彼女をしきりに励ましていた。

「んはああっ……!あ、んんっ……。」

紀子美はせわしなく両太ももを摺り合わせ、突き出した屁っぴり腰を上下動させていた。

股間を握る左手には思い切り力がこもっている。

まるでお嬢様にはあるまじき、はしたない姿だ。

しかし、そのあられもない恥ずかしい姿を、紀子美は三人の男性たちから、じっと見下ろされてしまっているのだった……。

「はあああ!んんんっ……!」

紀子美は手すりから右手を離し、スカートを握りしめて腰を浮かせた。

スカートを握る右手には強烈な力がこもり、全身は激しく硬直したように見えた。

「ほら頑張って……!」

「オモラシしちゃ駄目よ……!」

婦人連れは、必死に紀子美を励ました……。

エレベーター故障から1時間以上……。

紀子美の尿意は、いよいよ激しさを増していた……。

「私、もう一度インターホンで連絡してみるわね……?」

一人の婦人は紀子美から離れ、インターホンのボタンを押した。

「はい……。」

今度はすぐさま応答があった。実は先ほど紀子美の尿意を連絡した際、管理会社の配慮から、インターホンが直接、修理現場へと結びつけられていたのであった。

「あの、修理はまだかかるでしょうか?お嬢さん、もう、出ちゃいそうなんですけど……!」

婦人はインターホンに向かって切迫した声で訴えた。インターホンのスピーカーからは、30代前半くらいの男性の声で返答があった。

「実はもうすぐ修理が完了します……。もう少しで動きますから、お待ち下さい……。」

インターホンの返事は朗報と言えた。しかし婦人はあまり信じていない様子だった。

「本当ですか……!?早くしていただかないと、お嬢さん、もう本当にオモラシしちゃいますよ……!?」

婦人は不必要に大きな声を出し、紀子美にとって恥ずかしい言葉をインターホンに叫んだ。

お嬢さんもう本当にオモラシしちゃいますよ……〃

――乗客の男性たちも聞いている前だというのに……!

紀子美は耐え難い恥辱に、また激しく顔を歪め、嗚咽した…… 。


12時50分。

これまで昼の情報番組を細切れに中断し生中継を行って来た某局であったが、今、その画面の下には、予定していた番組の中止を告げるテロップが出た。レポーターもそのことに触れ、説明を行った。

「ええ本日は番組の内容を一部変更いたしまして、この新宿エレベーター故障事故の模様をお知らせして参りましたが、事態が急変いたしました関係から番組を変更し、『サンデー昼ナマ60分』は、ここまでで中止とさせていただきます。申し訳ございませんが、このまま中継を続けさせていただきますので、どうぞ御了承下さい……。」

レポーターが「事態が急変」と言っていたのは、紀子美の尿意のことを指していた。

どんな女性かは分からなかったものの、「若い女性」が尿意を催しているという状況は充分視聴者の「気になる」状況であり、いわゆる「数字の取れる」オイシイ状況なのであった。

局にはエレベーターの中を映せないのかという問い合わせ電話が数多く寄せられており、スタッフの数人は今、エレベーター内を撮影できる場所を探して奔走しているところであった。他局の中にも、1時ちょうどからの中継開始を急きょ決定し、その準備に逐われているところが多かった。

そんな時である。

レポーターのところに新たな情報が飛び込んで来たのだった。

エレベーターの修理が完了し、間もなく動き出すという。

レポーターは直ちに報告を始めた。

「ええ、ここでまた新しい情報が入って参りました!たった今、エレベーターの修理が完了し、間もなくエレベーターが動き出す模様です……!繰り返します……」

画面には、下から見上げたエレベーターの映像が映し出されていた。

ヤルタ前の人々は、皆立ち止まってスクリーンを見上げていた。

エレベーターの様子は、全く今までと変わらないように見えていた。が、レポーターの報告が終わって数秒したその時のこと、エレベーターは突然ガクンと下に動き出し、そのままスムースに降下を始めたのだった。

「あっ!動き出しました……!たった今、エレベーターがようやく下に下がり出しました……!」

新宿ヤルタ前にはレポーターの実況が響き渡り、人々のどよめきが広がって行った……。


「おお、動いた!」

「動いたよ!おい!」

エレベーターの中でも、乗客たちが声をあげていた。

婦人連れは紀子美に手を添えたまま、「良かったわね」「おトイレ行けるわよ?」と声をかけていた。

窓の外には、ビル街の景色が下から上へと流れて行くのが見えた。

一人のオタク風青年は窓の下を見下ろし、徐々に道路が接近して来る様を見ていた。彼はそれから歩道橋の上にたくさんのテレビカメラが集結して見上げているのを発見し、驚きの声をあげた。

「うわあ、あんなにテレビカメラが……!ほら、歩道橋の上……!」

もう一人の「オタク」と、それに中年男性とは、彼の言葉を聞いて窓の下を見た。

紀子美も彼の言葉を気にして、そっと窓の下へ目を向けて見た。

すると、紀子美のいる側の窓からちょうど斜め下の方向にある歩道橋の上に、夥しい数のテレビカメラが集結し、見上げているのが見えた。

しかも、それらは、ぐんぐんと接近して来ていた……!

「いやっ……。」

紀子美は思わず身体の向きを変え、テレビカメラに背を向けるようにした……。


ヤルタの大スクリーンには、下りて来るエレベーターの映像が映し出されていた。今まで見えていなかった中の様子も少しづつ明らかになって行き、やがてドレスを着てしゃがみ込む紀子美の姿が現れた……。

「あっ……!今、エレベーターの床に膝を突いてしゃがむ、一人の女性が見えました……!白いドレスを着て、苦しげにしゃがんでいます……!」

ごく淡い薄桃色のミディドレスは、レポーターの目には白く光って見えたのだった。

「あの女性が、尿意を催しているのでありましょうか……!」

紀子美はカメラに背を向けて床に膝を突き、苦しげにうつむいて腰をモジモジと上下動させていた。髪の後ろを飾る真っ白なかすみ草と、ドレスの腰の大きなリボンとが印象的だった……。

ヤルタ前の群衆は、皆どよめいて映像を見上げていた。スクリーンに映るエレベーターは、やがてカメラと平行になる辺りまで下りようとしていた。

が、その時である……。

エレベーターは歩道橋の上で構えるテレビカメラと平行の位置まで差し掛かった瞬間、ガクンと突然、停止してしまったのであった。

エレベーターはそのまま、全く動こうとはしない。

人々はざわめき、レポーターは実況を行った。

「おおっと!これはどうしたのでしょうか……!」

紀子美の不運は、とどまるところを知らなかった……。


「あれえ……?ここで降ろされるのかな……?」

「下まで行くんじゃないの……?」

エレベーターの乗客たちは口々に不審の声を漏らしていた。

地上までもう少しというところまで来て、エレベーターは停止してしまった。

歩道橋は今や、彼らの目の前にあって、十数台のテレビカメラがこちらを平行に見据えていた。

「おいおい、これじゃ晒しものだよ……。」

オタク風の青年はカメラを見て言った。

紀子美はカメラに背を向けたまま股間を押さえてしゃがんでいたが、恐る恐る後ろを振り向いて見た。

すると……、そこには彼女のほぼ真後ろから至近距離で彼女を捉える無数のテレビカメラが並んでいるのだった。

「いやあ……っ……。」

それは全く「目の前」と言って良かった。

紀子美はまたカメラから顔を背け、耳までを真っ赤に染めて羞恥した。

――お手洗いを我慢してしゃがみ込んでいる姿をテレビに映されるなんて……。

紀子美は恥ずかしさのあまり、目を閉じて大量の涙を床に落とした……。


「ああ、これは間違いありません!かなり辛そうな様子です……!」

テレビのレポーターは、紀子美の腰がモジモジと上下動するのを見て、そう叫んだ。エレベーターの中で尿意を催している哀れむべき女性は、あのドレスを着た娘なのに違いなかった。

紀子美の尿意はどこまでも冷酷で、彼女に恥ずかしい腰の上下動を、引き続きテレビカメラの前でまで強制していたのであった……。

「薄桃色のドレスを着た女性……、苦しげな様子で尿意を堪えています……!」

紀子美の尿意は、ハッキリとテレビを通して全国に伝えられてしまっていた。

画面には、明らかに尿意を堪えて腰をモジモジと動かす、ドレス姿の哀れなお嬢様の後ろ姿が映し出されていた。

映像は続いて下の歩道から写したものに切り替わり、紀子美の姿が正面から捉えられた。

背後の歩道橋に背を向けた格好で床に膝を突き、左手で股間を握りしめ苦悶する紀子美の姿。

その映像は幅広の道一本を隔てた向かい側の歩道から、望遠レンズを使って写されたもののようで、紀子美の姿はそれほど見上げた感じにもならず、クッキリと鮮明に捉えられていた。

「ああ、ドレス姿の女性、下腹部を握りしめ、相当に苦しそうです……!」

歩道橋の上にいるレポーターは、今、モニターの画面を見ながら実況を行っていた。

画面の紀子美は、左手で股間を握りしめたまま右手を床に突き、前のめりにうつむいて腰をモジモジと上下動させていた。

太もももせわしなく摺り合わされている。

左右では婦人連れが彼女の肩に手を添えてやっていた……。

落ち着きをすっかり失ってしまっている哀れな紀子美。

彼女は続いて右手を額に持って行って当てると、うつむいたまま上半身を起こしつつ、腰を上げて行った。

彼女は額に手を当ててうつむいたまま、床に膝を突き、腰を上げた格好で、モジモジと太ももを摺り合わせた。

左手は股間を握りしめたままだ。

彼女の腰は左右にクネクネと動き、広がったスカートは柔らかに揺れて艶やかな光沢を放った……。

紀子美はそれから、何と額の右手を股間へと持って行き、左手の上へと重ねてしまった。

彼女はついに、両手で股間を握りしめてしまったのであった。

恥ずかしい姿……。

テレビカメラの目の前である……。

そして紀子美は苦しげな顔をのけ反らせ、両方の手で股間を強くギュッと押さえた……。

「ああ、何ということでしょうか……!ドレス姿の女性……、これは相当に苦しそうな様子です……!」

画面には股間を握りしめる紀子美の両手が大写しにされて行った。

白い半透明の手袋をした両手……。

スカートの生地には夥しい皺が寄っていた……。

そしてテレビカメラは、少しずつそこから彼女の上半身へと映像を移して行った……。

光沢のあるドレスを形良く膨らませる、適度に豊満な紀子美の胸……。3重に巻かれた真珠のネックレス……。そして、鼻筋の通った、紀子美の清楚な顔が、全国のテレビ画面にアップで映し出されて行った。

美しく結い上げた髪の後ろをかすみ草で飾り立てた、上品で楚々としたお嬢様の顔……。

秋葉原の電気店などでは、店の前に並べられた数十台のブラウン管全てに、紀子美のその美しい顔が映し出されていた。

「まあ綺麗なお嬢さんだこと……。」

「キレイ……。」

「カワイイ……。」

「綺麗なコだなあ……。」

「鼻の穴まで美人だよ……。」

「ホントだな、アハハ……。」

画面の前には大勢の人々が立ち止まって見つめ、紀子美の顔の美しさに皆、驚嘆していた。

エレベーターの中で尿意を堪えるお嬢様・紀子美は、今や全国の人前で、晒しもの同然の姿となってしまっていた……。

 

 

 

悪夢の瞬間(とき)

時計は午後2時を指した。

エレベーターは、その後少しも動いていなかった。

全国のテレビには今や、ほとんどのブラウン管に、皆同じエレベーターの映像が映し出されていた。

今や他局の多くも、エレベーター故障事故の中継を開始していたのである。

紀子美の名前や年齢などは、もうテレビ各局の取材によって調べられ、視聴者に明かされてしまっていた。彼女が高名な白石博士の孫娘であることも、紹介されてしまっていた。また、いくつかの局では、彼女がハイヤーを降り、MSビルのエレベーターに乗るまでの経緯をも、目撃者の証言から詳しく解説したところだった。 

画面では紀子美が、床に膝を突いたまま左手で股間を握りしめ、右手では手すりにつかまりながら、せわしなく腰を上下に動かしていた。その腰の動きは今やもの凄く大きな動作となっており、まるで母親の手を握った小さな子供が「もう洩れちゃうよう……!」と大騒ぎして母親を困らせているような、そんなあられもない姿であった。

気品溢れる紀子美の顔とは、あまりにもギャップの大きい、はしたない姿……。

「もう、こんなのテレビに映されちゃって……、あのお嬢さん、お嫁に行けなくなっちゃったんじゃないの……?」

視聴者の中には、そう心配する声もあった……。


「んああ……、で、ちゃう……。」

美しく、か細い声ながら、紀子美は信じられない言葉を吐いていた。

乗客の男性たちは、その紀子美の姿をじっと窓際から見下ろしていた。

紀子美の両脇には婦人連れがしゃがみ込み、彼女の身体に手を添えてやっていた。

婦人らはしきりに紀子美へ声をかけ、彼女を励ましてやっていた。しかし彼女らの心中には、もうこれ以上紀子美に我慢を強いることへの戸惑いが生じ始めていた。

「もう、駄目かしらねえ……。」

一人の婦人は連れの婦人に向かって、そう小声で言った。

連れの婦人は心配そうな顔を彼女に向け、「ええ……、させちゃった方がいいのかしら……。」と、低く抑えた声で答えた。

「ん、はああ、んんんん……!」

紀子美の声は一層切迫の度を増していた。

紀子美は左手で股間を握りしめたまま、のたうつように身をくねらせ、そして大きく腰を上げ下げさせていた……。

「ねえ、エレベーターの上か何かから、救助してもらえないのかしら……。」

一人の婦人は、相方の婦人にそう尋ねてみた。

「そうねえ……。」

相方の婦人は、顔を曇らせたまま、考え込むように言った。

「私、ちょっと聞いてみるわね……?」

先の婦人はそう言って立ち上がり、インターホンへと向かって行った。

「は、ああん……で、ちゃうう……んあああ……!」

紀子美は澄んだ上品な声で苦悶しながら切なげな顔を上げ、腰を大きくくねらせた。

「ほら頑張って……!まだ、しちゃあ駄目よ……!」

横に残った婦人が励ました。

「あ、もしもし……?」

婦人はつながったインターホンに向かって話しかけた。

「あの、お嬢さん、かなり辛そうなんですけどねえ……、上かどこかから救助してもらうのって、できないんですか……?」

スピーカーからは男性の声で返事があった。

いわく、少々恐いと思うが(と彼は前置きしたのだったが)、10階の扉からロープを下ろし、紀子美を助け上げてやることはできると言う。

「そうですか!じゃあ、やって下さい、それ……!」

婦人はインターホンに向かって叫んだ。

と、その時である。

「んああ……、もう、あっ……、で、出ちゃううう……!」

紀子美が高く、切迫した声をあげた。

彼女の身体は、激しく異常に震え始めていた……。

「あなた、やっぱりもう駄目よ……!」

紀子美のそばに残った婦人は、インターホンの婦人に向かってそう叫んだ。

「あらら!大変……!」

インターホンで話していた婦人は、「ちょっとスミマセン!」と言ってインターホンを離れ、慌てて紀子美のそばへと駆け寄って行った。

「んああああ……!で、ちゃうううう……!」

「もう駄目よ、やっぱり。させちゃいましょう?お嬢さん……。」

「そうね……。仕方ないわね……。」

婦人たちは急きょ話をまとめると、紀子美の身体に両手を添え、彼女に「さあ、立ちましょう」と言って促した。

紀子美は婦人たちの意図を知ってか知らぬか、彼女らに引かれるまま、ゆっくりと立ち上がり始めた……。


「おおっと、白石さん、何やら2人の女性たちに手を添えられ、立ち上がって行きます……!」

テレビではレポーターが実況を行っていた。

視聴者たちは、じっと画面を見つめていた。

画面の紀子美は中腰で立つと婦人連れに促され、カメラに背を向けてドアの方へと歩き始めた。

「おおっと!白石さん、歩き出しました……!2人の女性に手を添えられ、エレベーターの奥へと歩いて行きます……!」

前屈みに腰を落とした後ろ姿の紀子美は、小刻みに全身を震わせながら、一歩ずつゆっくりと、ドアに向かって歩を進めて行った。

広がったスカートの腰を飾る蝶結びの大きなリボンと、髪の清楚なかすみ草とが、この時もやはり、実に印象的に見えていた……。


「まだよ、まだよ!」

「まだ我慢してね!」

腰を落として震える紀子美を、両脇の婦人たちは必死に励ましていた。

紀子美の白いハイヒールは、一歩ずつ、やっとの思いで前に出されている感じだった。

紀子美は両頬に涙を流しつつ、苦しげに泣き声を洩らしていた。

男性たちはじっと見ている……。

紀子美は彼らの見つめる中、両手でスカートの股間を押さえ込み、スラリとした身体を無様に折り曲げて、ヨタヨタと歩を進めていた。

「んああ!で、ちゃうう……!」

紀子美は切なげに顔を歪め、そして、その場に立ち止まった。

「んあ、もう駄目……、で……ちゃうう……!」

彼女はせわしなく両脚を摺り合わせ、腰をクネクネと蠢かせた……。

「ほら、頑張って……!」

一人の婦人は紀子美を励ました。

しかし、もう一人の婦人は、

「もう、ここでいいわよ!」

と、相方に反論をぶつけた。

「だって……、」

先ほどの婦人は、困惑した面もちで彼女の顔を見た。

「いいわよ……!あっちに行ったって、どうせ見えちゃうんだから!」

後の婦人はさらに、そう言い放った。

そして彼女は男性たちの方を向き、

「男の人たち、見ないであげて!」

と、唐突な言葉を叫んだ。

男性たちは訳が分からず、皆、唖然とした。

「さあ、早くパンティーを……!」

婦人は、すると相方の婦人へと向き直り、そして自らの両手を紀子美のスカートの後ろ側へと伸ばした……。

「うわ!」

「うわっ……!」

一瞬の後、エレベーターの中には青年たち二人の叫ぶ声が聞こえた……。

何と彼らの目の前で、今、紀子美のスカートが、バッサリとめくり上げられてしまったのだった……。


「おおっと!これは……!スカートが……!」

ヤルタ前には、思わずあげたレポーターの声が大きく響き渡った。

群衆は皆、どよめき声をあげスクリーンを見上げた。

スクリーンでは、今、紀子美がドレスのスカートを思い切りめくられ、その白いパンティーを丸出しにされてしまったのだった。

それはシルクのパンティーだった。

スカートは前屈みになった紀子美の背中へと、真っ白なパニエごとバッサリ被せられてしまっており、紀子美のパンティーは意外にも大きな彼女の尻を包み込みつつ、純白の薄いストッキング越しに全て丸見えとなっていた……。

「おわあっと!これは一体……、どうするのでしょう……!」

レポーターは、その衝撃的展開を前に思わず興奮して叫んでいた。

画面の婦人たちは、彼女らの親指を紀子美のパンストのゴム部分へと入れた。

そして彼女らは、その指をパンティーの中にまで差し込んだと思うや、二人してズルズルと引き下ろし始めた……!

「ああっ!と、下着が脱がされて行きます……!」

レポーターは大声で叫んだ。

紀子美の白い大きな尻が、やがて巨大スクリーンの中で目映く露出した……。

ワレメも全て完全に丸出し。

シミ一つない、綺麗な、しかし、大きい尻だった……。

「やあん!お尻が見えちゃった!」

「すげえ!」

「尻が出たよ、おい……!」

ヤルタ前の群衆は、口々に興奮して声をあげていた……。


「早くして、早く……!」

婦人連れはめくり上げた紀子美のスカートを片手で押さえながら、紀子美のパンティーとパンストとを彼女の太ももへとずり下ろして行った。

オタク風の青年たち2人は、目を見開いてニヤニヤと顔を向け合い、紀子美の尻を興奮して見ていた。中年男性は顔を上気させ、少し狼狽した様子であったが、しかし、その目はただ一点、紀子美の白い剥き出しの尻へと、じっと向けられたままだった。

紀子美は顔を真っ赤にして声をあげて泣きながら、両手でスカートの股間を押さえ、目を閉じて頭を振っていた……。

「んあ、いや、んああああ……!」

「我慢して……!」

「御免ね……!」

婦人たちは紀子美のパンティーとパンストとを、彼女の膝上まで下ろして行った。

と、その時である……。

「んあ、あ……!」

紀子美はそうして、か細い声を洩らしたと思うや、閉じていた目を見開き、絶望の表情を顔に浮かべた……。

――ジョジョッ……!

エレベーターの床で、その時、液体の当たる音が聞こえた……!


「おわああああああああああっ……!」

新宿ヤルタ前の広場には、先ほどよりも一層大きな声があがった。

何と大スクリーンに映った紀子美の尻からは、透明な液体が一気に迸り出たのであった……!

キラキラと光る、その液体。

それは、紀子美の放った小便に他ならなかった……。

「あああっ、と!これは大変……!

「白石紀子美さん……、失禁してしまいました……!」

レポーターは大声をあげ、その衝撃的展開を伝えた。

テレビの前では秋葉原でも、各茶の間でも、いたるところで大騒ぎとなった。

尻を丸出しにされたお嬢様の失禁――。

それが今、彼らの目の前にあるブラウン管の中へと映し出されてしまったのだった……。


「あらら出ちゃった!」

「大変!」

「ほら、しゃがんで……!」

婦人たちは大慌てで紀子美をしゃがませようとした。しかし紀子美の身体は硬直して震えており、どうしても動きそうになかった。

婦人連れはめくっていた紀子美のスカートから手を離し、両手で彼女の身体を支えた。紀子美のスカートはまた元のように下りてフンワリと広がり、腰には大きな蝶結びのリボンが現れた。

紀子美は顔を歪ませて泣きながら、両手でスカートの股間を押さえつつ、歯を食いしばるようにして恥ずかしそうに頭を振っていた。

まるで発狂しそうな様子である。

紀子美が両手で押さえているスカートの股間には、ごく淡い薄桃色の生地の上に、真っ黄色なシミがみるみるうちに広がってしまっていた……。

「男の人たち!見ないであげて……!」

婦人たちは叫んだ。

しかし男性たちは皆、紀子美の姿を見たままであった。

床では紀子美の尿が激しく音をたて、白い床板の上へと黄色い水たまりをみるみる広がらせていた。

美しく清楚なドレス姿のお嬢様は、パンティーが膝上に下りた恥ずかしい中腰姿のまま、男性たちの見る前で惨めにも失禁してしまっているのだった。

あんなに恐れていた悪夢のような出来事が、今や紛れもない現実となってしまったのである……。


「失禁!失禁!

「オモラシしています……!

「白石紀子美さん、オモラシ……!

「これは恥ずかしい!

「最悪の展開です……!

「23歳、お嬢様……!

「恥ずかしい!

「オモラシしています……!」

テレビではレポーターが興奮して叫んでいた。

ヤルタ前で、秋葉原で、そして全国のブラウン管の前々で、人々は失禁する紀子美の後ろ姿を驚きの顔で見つめていた。

髪の後ろを真っ白なかすみ草で飾った、おめかし姿のお嬢様。

その美しく清楚なお嬢様が、今、彼らの目の前で腰を落として立ったまま、恥ずかしくもオモラシしてしまっているのだった。

床では激しくハネが上がっている。

それは猛烈な勢いの放尿であった……。

「……ああ、これは恥ずかしい!

「白石紀子美さん、オモラシです……!

「美しいドレスに身を包んだまま……、

「白石紀子美さん、失禁しています……!

「ああ、悲惨にも、テレビの前……!

「全国民が見ている、その目の前で!ああ……!

「恥ずかしいことになってしまいました……!

「オモラシしています……!

「白石さん、失禁!

「何ということでしょうか……!

「23歳、深窓の御令嬢……!

「お嬢様、間に合いませんでした……!

「ああ、何という……!

「何という光景でしょうか!

「お嬢様、失禁です……!

「白石紀子美さん、オモラシ……!

「どんどん出ています!

「信じられません!

「驚くべき光景……!

「凄い量です!凄い……!

「ああ……!

「どんどん出ています!

「23歳、令嬢のオモラシ……!

「ああ、何という……!

「ああ……!

「もう、これは……、

「何ということでしょうか……!

「あのお嬢様……、

「あの楚々とした白石紀子美さんが……!

「信じられません……!

「ああ、あられもなく……!

「ついにお嬢様、失禁してしまいました……!」

 

何と……、紀子美の失禁映像は、その時中継をしていた全テレビ局によって、日本各地へと放送されてしまったのだった。

前代未聞の失禁映像……。

視聴者の目はもちろん、皆ブラウン管へと釘付けになってしまっていた……。




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御感想などは

tiara@aiueo.artin.nuまで。

この物語はフィクションです(当たり前か……)。登場する人物、建物などは駅を除いて全て実在しません。

本作品の著作権は、本作アップロード日から50年間、愛 飢汚が所有するらしいです。